牛乳は日本人にとっても馴染み深い飲み物ですよね。学校給食や「体に良いから飲みなさい!」と言われて親しんで育った方も多いのではないでしょうか? 最近では新型コロナウイルスの影響により学校給食用の牛乳が余っていたという報道から、消費を促す活動も紹介されるなどして注目を集めていました。
 そんな注目の牛乳ですが、最新の研究では健康に対するリスクも報告されています。本日は牛乳が健康にもたらす影響を「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(以下、NEJM)」に掲載された「Milk and Health(牛乳と健康)」※1の報告から紹介していきます!

子どもの成長には牛乳がおすすめ!

 牛乳は成長期の子どもに必要な栄養素が豊富に含まれています。学校給食でも出されている通り、成長期の子どもにおすすめの食品です。成分としてはカルシウムのイメージが強いのですが、体づくりに大切な十分な量のたんぱく質も含まれています。※2 
 適切なたんぱく質を摂取することは、筋肉の成長にも効果的です。子育て世代の方は給食などで摂れない時期があった分、ご家庭での消費について意識されてみてはいかがでしょうか。牛乳を用いた乳製品は乳酸菌を豊富に含み、腸内環境や免疫力の向上につながると言われています。

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カルシウムを飲むと骨密度が良くなるのは本当?

 骨密度とは、骨を構成するカルシウム等が骨にどれくらい詰まっているかを示す指標で、骨の強度を表します。
 骨を強くするイメージのあるカルシウムですが、アメリカの男女約10,000人を対象としたカルシウム摂取に関する実験では、一定期間カルシウムサプリメントを摂ったところ、骨密度を改善させる結果が見られなかったことが分かっています。※2

 同じような実験でも2〜3週間、1,000~2,000mgのカルシウムを毎日摂取することで骨密度がよくなったとの実験結果もありますが、検査後、カルシウム摂取をやめると骨密度が上がった数値が元に戻ったとも報告されています。これらの研究からカルシウムは骨に良いとは断言できないと紹介されています。自分だけでなく家族の骨密度や筋力が気になるかたはこちらの記事もチェックしてみてくださいね。社員で筋力チェックを行いました!

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骨折のリスクは牛乳を飲むことで減らせる?

 成人男性を対象としたカルシウム摂取の研究では、牛乳の消費量が多い国に比べて、消費量が少ない国の方が、股関節の骨折が明らかに少ない傾向があるというデータが報告されています。※2

 また6000人以上を対象としてA「カルシウムのサプリを飲んでいる」グループと、B「骨密度には全く関係のないサプリを飲む」グループを比較する実験もされています。この結果では臀部(でんぶ・お尻)における骨折のリスクがBのグループよりも実際にカルシウムサプリを飲んでいたAの方が高かったという真逆の結果もでています。この報告から見るとカルシウムのみの摂取では骨によい結果はでていないようです。※4 ※5  カルシウムと合わせてビタミンDを摂ると「カルシウムの吸収と助ける」と言われています。カルシウムサプリを合わせてビタミンDも一緒に摂ってみましょう!

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牛乳がアトピーやアレルギーを引き起こす?

 今回の報告では牛乳をとることでアトピー症状が悪化するという研究結果や、食物アレルギーなどから起こる、喘息、湿疹などの症状を引き起こす可能性を強めることも報告されています。※6 

 一方で10年間以上、牛乳を飲んできた幼児よりも、チーズなどの精製たんぱく質を摂取してきた幼児の方がアレルギー疾患のリスクが低かったという研究結果も報告されています。これらの結果から牛乳と加工品では健康リスクへの影響への違いを考えることができそうです。 ※7

 

まとめ

 牛乳が健康に与える影響についておわかりいただけたでしょうか? 体に良い!というイメージのある牛乳ですが、必ずしも良い影響ばかりではないということが最新の研究では明らかにされつつあるのかもしれません。

 乳製品は現代の日本人にとっては身近なものです。良い部分とリスクを正しく認識し、これからも食生活へのアンテナをしっかりと張っていきましょう。最近は乳製品の「プラズマ乳酸菌」が免疫機能に関与したり、花粉アレルギー対策にもなると言われています。今話題の乳酸菌の新事実はこちらから

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監修:医学博士 久保明
   管理栄養士 岡部遥

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参考文献:
※1 「ミルクと健康」 C. Willett, M.D., Dr.P.H., and Vavid S. Ludwig, M.D., Ph.D. The New England Journal of Medicine Walter. February 13 2020
※2 「青年期の少女のミルク摂取と骨ミネラル獲得:無作為化対照介入試」 Cadogan J, Eastell R, Jones N, Barker ME. NCBI. November 15 1997
※3 「成人男性の最小カルシウム要件の研究」 Hegsted DM, Moscoso I, Collazos C. The Journal of Nutrition February, 1952.
※4 「閉経前後の女性の骨量減少に対するカルシウム補給の長期的影響」 Elders PJ, Lips P, Netelenbos JC. J Bone Miner Res. NCBI. Aprilr 1995.
※5 「カルシウムとビタミンDサプリメントの離脱が高齢男性と女性の骨量に及ぼす影響」 Dawson-Hughes B, Harris SS, Krall EA, Dallal GE. Am J Clin Nutr. September 2000.
※6 「グローバルな課題としての牛乳アレルギー」 Sackesen C, Assa’ad A, Baena-Cagnani C, Curr Opin Allergy Clin Immunol. June 2011
※7 「牛乳たんぱく質加水分解物による早期介入後のハイリスク学童のアレルギー:ドイツの乳幼児栄養介入」 von Berg A, Filipiak-Pittroff B, Krämer U. German Infant Nutritional Intervention (GINI) 2013

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