何かと便利な冷凍野菜、常に冷凍庫にストックしている方も多い最近。一方で、生の野菜に比べると加工の手間が加わった分、栄養価が損なわれているのでは?と、心配したことはありませんか? さらに冷凍野菜の多くは海外産が使われており、モノによっては現地の工場で加工されてることも少なくはありません。今回は、

「冷凍と生野菜って違いがあるの?」

 と、1度でも考えたことがある方に向けて、冷凍食品と生野菜の栄養価の違い、その安全性について調べてみました! 便利なだけでそんなうまい話があるはずないと思いの方も、ぜひ一度冷凍野菜の秘密について確認してみましょう!

こちらの記事は情報満載のため、時間をかけてお読みいただけます!結論を知りたい方は目次から飛んでみましょう!

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野菜の栄養価は下がってきている⁉

 冷凍野菜と生野菜を比較する前に、野菜の栄養価について、おさらいしておきましょう。

 実は、野菜の栄養価を調べ始めた初期と
今では、野菜の栄養価に差があると言われています。これは土壌に含まれる成分の変化や、品質改良、肥料の使用など、さまざまなことが原因と言われていますが、明確な原因はわかっていません。

 一方で厚生労働省では1日350gの野菜の摂取を推奨していますが、もし、野菜の栄養価がこれからも下がっていけばこの量はもっと増えるかもしれません。
野菜で栄養を賄おうと思うと、冷凍などの保存方法を活用し保存性なども工夫する必要があるのかもしれません。また調理方法によって栄養素の損失を防ぐことができます。野菜に含まれている栄養価や実際に調理をして栄養素の損失を防ぐ検証結果はこちらの記事からご覧ください。

野菜の栄養素の失われ方「知って得する調理法の違い」

 

冷凍野菜と生の野菜の栄養価を比べてみました

 冷凍野菜で特に気になるのは鮮度やビタミンですよね。鮮度が落ちると細胞が劣化し、劣化した細胞が壊れ、そこからビタミンも失われやすくなります。では冷凍された野菜の栄養素はどれほど残っているのでしょうか?

 今回は文部科学省が定めた日本食品標準成分表2015年版(七訂)に記載されている、生野菜と冷凍野菜の記載があるもののなかからお家で使われやすい野菜として、にんじん、ほうれん草、かぼちゃ、さといもを選び、比較してみました。 

▶にんじん
レチノール、β-カロテンが増加? 他ビタミンは少し減少。

 




 

β







D





K




B1





B2





B6





C

単位/100g kcal
にんじん
皮むき
ゆで
36 8700 (0) 18 0.06 0.05 0.10 19 4
にんじん
冷凍 
ゆで
31 12000 (0) 6 0.03 0.02 0.06 18 1


 人参はレチノールとβ-カロテンが冷凍したほうが増えています。冷凍とβ-カロテンの増加量についてはいくつか研究がされていますが、対象の野菜が少なかったり、そもそもの研究数が少なかったりと、確実な結果とは今現在では言えません。 ビタミンKは半分以下、他の栄養素もわずかに減っていますが無くなるということはないようです。

 

▶ほうれん草
β-カロテンは増加。他のビタミンは約1/2になったものも。

 




 

β







D





K




B1





B2





B6





C

単位/100g kcal

ほうれん草
葉/ゆで

25 5400 (0) 320 0.05 0.11 0.08 110 19

ほうれん草
葉 冷凍
ゆで

28 8600 (0) 480 0.06 0.05 57 5

  

にんじん同様、脂溶性のビタミンは増えていますがその根拠を示した研究数や結果は少ない状態です。ビタミンKも増加していますが、その他のビタミンは半分程度に減っています。葉物野菜はビタミンが失われやすい傾向にあるのかもしれません。

 

▶かぼちゃ
ビタミンは少し減少

 




 

β







D





K




B1





B2





B6





C

単位/100g kcal

西洋かぼちゃ
果実 生

91 4000 (0) 25 0.07 0.09 0.22 42 43

西洋かぼちゃ
果実 冷凍

83 3800 (0) 17 0.06 0.09 0.19 48 34

 

ビタミンK以外のもので大きな減少は見られませんでした。他の野菜同様、冷凍しても極端に減るということは無さそうです。

 

▶さといも
イモ類はでんぷん質が多く、ビタミンが流出しづらいためか大きな変化はありません。

 




 

β







D





K




B1





B2





B6





C

単位/100g kcal

西洋かぼちゃ
果実 生

58 5 (0) (0) 0.07 0.02 0.15 30 6

西洋かぼちゃ
果実 冷凍

72 5 (0) (0) 0.07 0.01 0.14 22 5

 里芋は冷凍することによって水分も減り、ビタミンは葉酸以外は大きな変化はないようです。
日本食品標準成分表2015年版(七訂)より 文部科学省

 

冷凍野菜と生の野菜の比較した結果は?

 データから見ると、冷凍野菜は生野菜と比較して栄養素の減少は見られましたが、完全になくなるということはないようです。また、最近の冷凍技術では急速冷凍などの技術が進化したおかげで細胞を壊すことなく、冷凍することが可能になり、より栄養素は失われにくくなっているとも言われています。

 β-カロテンなどは冷凍すると増えるという記事を多く見ますが、根拠となる研究はまだ少なく、比較されている野菜も数種類と少ないため、必ず増えると現時点では言えそうにはありませんでした。
 逆に、キノコ類では1度冷凍されたものを加熱することによって、細胞が破壊されやすくなり、キノコ類に含まれるうまみ成分が増加するという検証結果も報告されています。

一般社団法人 日本冷凍食品協会 「冷凍食品の基礎知識」
キノコは冷凍に適しているか(女子栄養大学)
菌蕈 一般財団法人 きのこセンター

 

便利でいいじゃん冷凍野菜、でもその安全性は?

「日本独自の安全性」
 冷凍野菜の多くは海外産のものを海外や日本の工場で加工しています。日本には社団法人による冷凍食品認定制度というものがあり、検査基準をクリアした冷凍野菜、食品にはこのマークがついています。安全性が気になるという方はこちらのマークを意識されてはいかがでしょうか?
一般社団法人 日本冷凍食品協会「認定証マークについて」


「原産地が海外の野菜」
 野菜の原産国が海外の場合、心配なのが農薬の残留や添加物の使用ではないでしょうか? 2002年に中国産の冷凍野菜や生鮮食品から基準値を超える農薬が検出され、この時のイメージで海外の野菜=農薬というイメージをもたれている方もいらっしゃるかもしれません。
 2002年後、中国、日本では再発防止策がとられ、残留農薬基準の検査は日本の基準で行われています。現在、残留農薬などについての報告のなかで健康に害が及ぶ基準値が日本国内で確認されたという報告は調べる限りでは見当たりませんでした。(2020年4月現在)

「輸入野菜の安全管理 検査制度と食品安全の取り組み」 農林水産省


▶「農薬はクリア、でも添加物は?」
 写真からもわかるように、冷凍野菜の多くでは保存料は使用されていません。
 理由としては、冷凍食品は微生物が繁殖できないとされる-15℃以下での保存が義務付けられています。(先ほど紹介した冷凍食品認定制度の認定証がついているものはマイナス18℃以下の環境での流通を自主基準として設定しています。)
 
 保存料が使用される目的は、「食品中の細菌が増え、食品の変質・腐敗を防ぐこと」なので、逆に冷凍食品は添加物なしのものが多いのです。一方で、温度を下げることで増殖は抑えられますが、菌は死ぬわけではありません。一度開封したものは保存するときに衛生面に気をつけましょう。一度解凍した後の再冷凍は不衛生なのでやめましょう。
※添加物が気になられる方は裏面の成分表示を確認されてみてください。

一般社団法人日本冷凍食品協会「認定基準」

食品添加物の最新情報を知りたい方はこちらから

食品添加物 とは?今こそ知るべき添加物の最新情報

まとめ 

 冷凍食品は便利な分、生野菜となにが違うのか、健康に問題はないのか気になりますよね。ビタミンCやB群などは冷凍で減る傾向にありますが、最新の急速冷凍でさらに栄養素は失われにくくなっていると言われています。安全性についても国や協会の認定証が付いたものを選ぶことは1つの指標となりそうです。

 冷凍食品を活用すれば料理の時間も短縮できます。正しい情報で、冷凍向き野菜、冷蔵向きの野菜を使い分けていきましょう。冷凍野菜のコスパや味について気になる方はこちらの記事もおすすめです。

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電子レンジで「失敗しないレシピ」(初級編)!集めて作ってみました!

監修:管理栄養士 岡部 遥

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