医学の世界では日々さまざまな研究が報告されています。
本日は、最新の研究結果のなかでも糖尿病などへのアプローチが期待される、褐色脂肪細胞とBCAAの関係について「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に掲載された「Taking a BAT to the Chains of Diabetes(糖尿病の鎖に褐色脂肪組織で挑む)」の研究結果についてご紹介します!
すでに褐色脂肪細胞とBCAAに関して記事をご覧になった方は褐色脂肪細胞およびBCAAの糖尿病との関わりは?からお読みください!
褐色脂肪細胞とは?
私たちの身体に存在する脂肪細胞は大きく分けて2種類あります。
1つは、エネルギーを貯める「白色脂肪細胞」、2つ目は寒さに反応してエネルギーを消費する「褐色脂肪細胞」です。褐色脂肪細胞は新生児に最も多く、成長するにつれて数は少なくなるとされています。褐色脂肪細胞についての詳しい記事はこちらをご覧ください。
あなたも持ってる!脂肪を燃やす褐色脂肪とは!
BCAAとは?
BCAAとはBranched Chain Amino Acidの略で、分岐鎖アミノ酸と呼ばれる健康を保つのに欠かせない必須アミノ酸3種類(バリン、ロイシン、イソロイシン)の総称です。
▶BACCの中身は?
名前 | 効果 |
---|---|
バリン | ・筋肉の強化に関わる ・血液内の窒素バランスを調整する ・アンモニアの代謝に関わる
豊富な食材:レバーや肉類、乳製品、落花生など |
ロイシン | ・必須アミノ酸内で最大の必要量 ・筋肉の生成を促進する ・肝機能に関わる
豊富な食材:動物性たんぱく、乳製品、大豆製品など |
イソロイシン | ・筋肉の強化に関わる ・肝機能に関わる ・血管を拡張する ・身体の成長を促す ・血糖値の上昇を抑制する可能性がある
豊富な食材:鶏肉、鮭、乳製品 |
必須アミノ酸は人体で作ることができないアミノ酸ですが、筋肉の合成や分解に関わることから近年注目されています。
▶アミノ酸とは
アミノ酸はタンパク質を構成する成分です。食品から摂ったたんぱく質は体内で消化吸収され、分解された結果アミノ酸となります。ここで作られたアミノ酸が筋肉や肌、臓器、髪や爪などの私たちの身体を支える基本となります。
一方で、たんぱく質を摂ると消化吸収には肉、魚類では4~6時間かかると言われています。
成分名 | 消化スピード |
---|---|
アミノ酸サプリ | 約30分 |
BCAAサプリメント | 約30分 |
卵 | 約1~2時間 |
魚類 | 約4~6時間 |
肉類 | 約4~6時間 |
大豆食品 | 約2~6時間 |
上記のように、たんぱく質は固く、固形物になるほど、消化吸収が遅くなります。運動と合わせて摂るときは、たんぱく質よりも、サプリメントなどになったアミノ酸で摂ったほうが吸収が良いため、最近ではBCAAのサプリメントが増えてきました。
ジム通いの方なら一度は聞いたことがあるかと思います。そんなBCAAはいつどれぐらい摂るべきか気になる方はこちらの記事がおすすめです!
BCAAはいつ、どれぐらい摂るのがベストか 管理栄養士に聞いてみた
糖尿病とは?
糖尿病とは、血糖値を下げるインスリンが十分に働かず、血液中のブドウ糖(血糖)が多くなることで糖尿病になります。
放置すると手足の痺れや失明、腎臓へのダメージによる生活の制限などが発生してしまいます。一般的に食事を摂ると血糖値が上昇しますが、健康な人は膵臓から出ているインスリンというホルモンによって、ブドウ糖を血液から体内に取り込み血糖値を一定にしてくれています。
インスリンが少なくなったり、効きが悪くなることで血糖値が上昇し、糖尿病になってしまうのです。血糖値についての詳しい内容はこちら。
血糖値って何?高血糖や糖尿病の基準を知ろう!
▶インスリンとは
インスリンとは食後、消化吸収した糖質により、血液の血糖値が増えることによって、膵臓から分泌されます。一方で、インスリンは「肥満ホルモン」とも言われ、過剰に分泌されると肥満の原因になることが報告されています。
インスリンが過剰に分泌されないためには、血糖値の上昇を下げることが重要です。健康診断などで血糖値が気になった方は結果を見て見ぬふりはせず、食事療法や運動療法をかかりつけ医に相談しましょう。
褐色脂肪細胞およびBCAAの糖尿病との関わりは?
前述が長くなりましたが、褐色脂肪細胞は機能として、脂肪をエネルギーに変える働きをしますが、それはとくに低気温(12℃以下)になることによって、エネルギーを生み出しやすくなると言われています。
今回の報告では摂取したBCAAを褐色脂肪細胞でエネルギー代謝する際に、その効率が低下すると肥満やグルコース代謝異常、インスリン抵抗性が悪化したとされています。
このことから褐色脂肪細胞でのBCAAの代謝が熱産生を行うだけでなく全身の血糖値の調整の要因となっていると考えられています。具体的な仕組みは解明されておりませんが、今後の糖尿病患者などの治療にこれらが役立つことが期待されています。
参考文献:「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン 「Taking a BAT to the Chains of Diabetes」 Zoltan Arany, M.D., Ph.D.」
褐色脂肪細胞の他の働きは?
褐色脂肪細胞が活性化されることで脂肪を代謝し、熱を発生させることが分かっていますが、ダイエットだけではなく、メタボリックシンドロームの改善にも効果があると期待されています。
▶メタボリックシンドロームとは
メタボリックシンドロームとは、内臓肥満や高血圧、高血糖、脂質代謝異常などが組み合わさることにより、心臓病や脳卒中などになりやすい状態のことをさします。
イメージでは、お腹の出ている人=メタボリックシンドロームと思われるかもしれませんが、内臓肥満は「隠れ肥満」とも呼ばれ、体型が痩せ(細い)人でも、健康診断では内臓肥満と言われた場合は、メタボリックシンドロームの可能性があります。
▶褐色脂肪細胞への期待
加齢に伴い褐色脂肪細胞の数や活性が低下することも報告されていますが、糖尿病やメタボリックシンドロームへの新たなアプローチとして研究が進められています。
褐色脂肪細胞は寒くなる時期には活性化します。さらに寒い季節は筋肉が体を温めようと代謝が上がるため、運動効果はさらに高くなります。褐色脂肪細胞を意識することで、冬の運動効果は今までと異なるものが感じられるかもしれません。
まとめ
褐色脂肪細胞が糖尿病やメタボリックシンドロームの新たな治療アプローチとして期待されているということをご理解いただけたでしょうか? こうした最新の情報収集を毎日の生活に活かしたいものですね。
褐色脂肪細胞は寒くなることで、より脂肪を熱エネルギーとして消費しやすくなります。寒くなる季節は運動もしづらくなるかもしれませんが、今年は褐色脂肪細胞に着目したトレーニングをしてみませんか?
寒くなった季節は、すぐに身体を温められる有酸素運動がおすすめです! 有酸素運動の基本についてはこちらの記事をご覧ください!
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監修:管理栄養士 岡部 遥
飲料メーカー勤務を経てドリコスへ参画。スポーツジムなどへオーダーメイドサプリメントサーバーと最新の栄養知識を紹介しています。
革靴とお酒が大好き。最近はサラダチキンも好き。