肌荒れ・ニキビ・運動・風邪、さまざまな身体の悩みを解決しようと薬局にいってみると、よく見かけるビタミンの中に、ビタミンBと付くものが多いと思ったことはありませんか?
 なんとなく、肌や身体に良いというイメージのあるビタミンB群。今回は多くのビタミンの中から、肌トラブルに作用することが知られるビタミンB群について、基本的な機能、豊富な食べ物、過剰症や欠乏症について紹介していきます!

ビタミンB群とは?

 ビタミンB群には下記の8種類が含まれます。すべて水に溶けやすい水溶性の性質を持ち、身体に貯蔵することができないため、普段から適度な摂取が必要とされています。

ビタミンB1 / ビタミンB2 / ナイアシン / パントテン酸
ビタミンB6 / ビオチン / 葉酸 / ビタミンB12

 ビタミンB群の発見は、1887年にオランダ人の C. Eijkman が、鶏に脚気(かっけ)を起こさせることに成功し、その脚気が米ぬかを投与することで治ることを見いだし,脚気に有効な成分が米ぬかにあるという仮説が立てられたことから始まります。
 その後、1910年に米ぬかから脚気に有効な成分(抗脚気因子)を抽出に日本人の鈴木梅太郎が成功しました。 C. Eijkmanと鈴木梅太郎が発見した成分こそ、現在のビタミン B1と呼ばれるチアミンです。

そもそも「ビタミン」とは?

 ビタミンは身体のあらゆる働きを正常に保つために大切な栄養素です。油に溶ける脂溶性ビタミンと水に溶ける水溶性ビタミンに分かれており、体内での働きも異なります。(※1)
 ビタミンは体内ではほどんど合成することができないため、食品などからこまめに摂取することが重要です。

 

水溶性ビタミンとは?

 水溶性ビタミンにはビタミンB群とビタミンCがあります。水溶性ビタミンは水に溶けやすため、茹でたり、加熱することで失われやすい性質を持ちます。一方で特定の食材やサプリメントなどから摂っても使われなかった分は、尿として排出されるため、極端に多く摂らなければ過剰摂取の心配はありません。

 

ビタミンB群の機能とは?

 ビタミンB群は「ビタミンB1」「ビタミンB2」「ナイアシン(ビタミンB3)」「パントテン酸(ビタミンB5)」「ビタミンB6」「ビオチン(ビタミンB7)」「葉酸(ビタミンB9)」「ビタミンB12」に分かれます。

これらのビタミンB群を働きから分けると、大きく分けて4つに分類されます。 

1.エネルギー産生に役立つ
・ビタミンB1…炭水化物をエネルギーに変える
・ビタミンB2…脂質をエネルギーに変える
・ナイアシン(ビタミンB3)…脂質や炭水化物をエネルギーに変える
・ビタミンB6…たんぱく質をエネルギーに変える

2.エネルギー代謝を助ける
・パントテン酸…エネルギー代謝に関わる補酵素の材料となる

3.血のめぐりをサポートする
・ビタミンB12…全身に酸素を運ぶ赤血球を作るため、貧血対策になる
・葉酸(ビタミンB9)…全身に酸素を運ぶ赤血球をつくり、鉄欠乏性でない貧血対策になる

4.皮膚の健康をサポートする
・ビオチン(ビタミンB7)…皮膚のもととなるたんぱく質を作る働きをする

ビタミンB群の過剰症、欠乏症

 いくつかのビタミンには厚生労働省が定めた摂り過ぎのボーダーラインとしての「上限量」が定めらています。1度の摂取量や、継続した摂取が続くと過剰摂取により身体に影響が発生します。また不足した場合も江戸時代に流行ったビタミンB群が不足することによって起きる脚気(かっけ)のように欠乏症が引き起こされます。
 ここからは各ビタミンB群ごとに過剰摂取と欠乏症についてご紹介していきます。

 

ビタミンB群の機能まとめ

 ここからは各ビタミンたちの機能などについて確認していきましょう!

 

ビタミンB1

 ビタミンB群のなかでも多くの食材に含まれていますが、特に豚肉などに多く含まれ、疲労を貯めないためにもこまめに摂りたいビタミンです。不足すると、さまざまな不調につながります。

 

機能
・炭水化物をエネルギーに変える ・疲労回復サポートに
 ご飯、パン、麺等の炭水化物を多く食べてもビタミンB1がなければエネルギーに変換することができません。 ビタミンB1を補うことで疲労物質はエネルギーになる前の回路に戻り、疲労物質が体にたまることを防ぎ、疲労のサポートに繋がります。(※1)

 

欠乏症
 脚気(かっけ)、(末梢神経障害,心不全)、ウェルニッケ-コルサコフ症候群(昏睡や意識障害)になりやすいと言われています。また、不足すると肩こり、筋肉痛、疲労、アルコール中毒、食欲不振、記憶力減退、集中力低下、音に過敏、神経炎に繋がると言われています。

 

過剰症
 通常の食品で可食部100g当たりのビタミンB1含量が1mg を超える食品は存在しません。通常の食品を摂取している方は、過剰摂取による健康障害が発現したという報告は見当たりません。(※2)

 

おすすめの食べ物
 豚肉、うなぎ、玄米、たらこ、黄大豆など
 
ビタミンB2

 ビタミンB2は脂質をエネルギー代謝するのに欠かせないビタミンです。肌の調子を整えるのにも欠かせないビタミンなので、口内炎やニキビなどの粘膜の炎症にも機能を期待できるため、薬局などでも多く見かけるビタミンです。

機能
脂質をエネルギーに変える ・身体の成長をサポートする
 脂質をエネルギーに変えるため、脂肪蓄積による肥満を回避することが期待できます。よって食べすぎた日にもビタミンB2はおすすめです。  子どもの成長や胎児の発育を助けるため、別名「成長ビタミン」とも呼ばれています。妊娠中の女性の場合も摂取が必須となる栄養素です。

 

欠乏症
 口唇炎、口角炎、脂漏性皮膚炎,、肝臓機能低下、脂質の過酸化、疲れ眼や眼の充血、口内炎、舌炎、皮膚・粘膜に炎症等

 

過剰症
 通常の食品で可食部100g当たりのビタミンB2含量が1mgを超える食品は、レバーを除き存在しません。通常の食品を摂取している方で、過剰摂取による健康障害が発現したという報告は見当たりません。

 

おすすめの食べ物
 レバー(豚、牛、鶏)、うなぎ、かれい、ぶり、牛乳、モロヘイヤなど

 

ナイアシン(ビタミンB3)

 ナイアシンは体内で食べたものから、エネルギーを作りるのに必要な酵素をサポートする補酵素、NAD(ニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド)になります。NADはアルコールを分解、代謝する過程で発生するアセトアルデヒドを体内で無毒化するためにはナイアシンが欠かせません。二日酔いがひどい場合は、ナイアシンが不足している可能性があります。

機能
・脂質や炭水化物をエネルギーに変える ・皮膚や粘膜の健康をサポート
 ナイアシンはエネルギーをつくるための補酵素※として働きます。 ※補酵素…酵素が代謝の出発物質となる基質に完全に作用するために必要な補助分子のことです。  皮膚や粘膜の代謝に関わります。皮膚の細胞は約28日単位で生まれ変わると言われています。

 

欠乏症
 ナイアシンが欠乏すると、ナイアシン欠乏症(ペラグラ)が発症します、ぺラグラの主症状は、皮膚炎、下痢、 精神神経症状です。

 

過剰症
 通常の食品を摂取している方で、過剰摂取による健康障害が発現したという報告は見当たりません。
 また、ナイアシン摂取による軽度の皮膚発赤作用は一過性のものであり、健康上悪影響を及ぼすものではないことから、耐容上限量を設定する指標には用いられていません。

 

おすすめの食べ物
 たらこ、かつお、まぐろ、鶏むね肉、レバーなど


 肌荒れやニキビは食生活に加え、ホルモンバランスの乱れが関与していることも多く見受けられます。
ニキビなどの肌トラブルの具体的な対策方法はこちらの記事がおすすめです。

 

パントテン酸(ビタミンB5)

 パントテン酸はビタミンCの働きをサポートし、体内でコラーゲンを生成するのに関わっています。同様にストレスを感じたときに副腎皮質でホルモンを作る際にも関わるビタミンです。無理なダイエットはパントテン酸の不足にもつながるため、気をつけましょう。

機能
補酵素の材料となる ・免疫が気になる人に
 パントテン酸はエネルギーを作る時際に、補酵素して使われるコエンザイムAの原材料となります。  ビタミンB2や葉酸などと共に、感染症等の免疫力に関わるとも言われています。

 

欠乏症
 パントテン酸が不足す ると、細胞内の補酵素が低下するため、副腎傷害、手や足のしびれと灼熱感、頭痛、 疲労、不眠、胃不快感を伴う食欲不振などが起こります。

 

過剰症
  通常の食品で可食部100g当たりのパントテン酸含量が5mgを超える食品は、レバーを除き存在しません。通常の食品を摂取している者で、過剰摂取による健康障害が発現したという報告は見当たりません。

 

 
おすすめの食べ物
レバー(鶏、豚、牛)、納豆、たらこ、アボカドなど


 免疫力に関する栄養素が気になる方は、こちらの記事もおすすめです!

 

ビタミンB6

 たんぱく質を分解し、体内で再合成するのに欠かせません。また、体内でリラックス効果を高めるGABAのを作りだすのにも関わります。腸内細菌からも作られるため不足することはほとんどありません。ビタミンB2により活性化するため同じく意識するのがおすすめです。

 

機能
・たんぱく質をエネルギーに変える ・子どもの成長に関わる
 たんぱく質を分解してエネルギーに変え、分解されたアミノ酸で血液やホルモンなどを作ります。  子どもの成長に重要なビタミンであり、アミノ酸の代謝がスムーズに行われると皮膚や粘膜等が生まれ変わりやすくなります。

 

欠乏症
 ビタミンB6 の欠乏により、ペラグラ様症候群、脂漏性皮膚炎、舌炎、口角症、リンパ球減少症が起こり、成人では、うつ状態、錯乱、脳波異常、痙攣発作が起こります。

 

過剰症
 通常の食品で可食部100g当たりのビタミンB6含量が1mgを超える食品は存在しません。通常の食品を摂取している方で、過剰摂取による健康障害が発現したという報告は見当たりません。
 
おすすめの食べ物
まぐろ、かつお、レバー、鮭、鶏むね肉など

 

 

ビオチン(ビタミンB7)

炭水化物、タンパク質、脂質のすべての分解に関ります。ビオチンは腸内で善玉菌からも作られるため、腸内環境を整えることと、不足することもほどんどないとされています。

機能
・皮膚などのたんぱく質のもとを作る ・皮膚炎で困っている方に
 たんぱく質の合成に関与します。ビオチンは肝臓、腎臓や筋肉に多く存在しています。  皮膚の炎症やかゆみを起こすヒスタミンを作るのを防ぐと言われています。

 

欠乏症
 食欲不振、吐き気、うつ症状、顔色の悪化等が起こることがあります。

 

過剰症
 通常の食品で可食部100g当たりのビオチン含量が数十µgを超える食品は、レバーを除き存在 せず、通常の食品を摂取している方で、過剰摂取による健康障害が発現したという報告は見当たりません。

 

おすすめの食べ物
 レバー(鶏、豚、牛)、まがれい、バターピーナッツ

 

葉酸(ビタミンB9)

 タンパク質を細胞として作るにはDNAが不可欠です。葉酸はこのDNAを作のに欠かせない材料で正常に作られるように、サポートする機能も持ちます。また、貧血の一種「悪性貧血」を防ぐためには鉄だけでなく、葉酸とビタミンB12が欠かせません。

機能
・全身に酸素を運ぶ赤血球をつくる ・胎児の健やかな成長に関わる
 ビタミンB12と一緒に酸素を運び、食べたものをエネルギーに変換します。  胎児の成長に「葉酸」は欠かせません。妊娠前からしっかり量を摂取する必要があります。

 

欠乏症
 妊娠中、透析を受けている人、アルコール依存症患者さんなどは不足することがあります。妊娠を計画している女性、妊娠の可能性がある女性は、葉酸を摂取することが胎児の神経管閉鎖障害発症の予防に重要です。

 

過剰症
 食事での葉酸の過剰摂取による健康障害の報告はありません。しかし、厚生労働省は葉酸のサプリメント(モノグルタミン型葉酸)や葉酸が強化された食品から摂取された葉酸に限り、狭義の葉酸の重量として耐容上限量を設定しています。

 

おすすめの食べ物
 レバー(鶏、豚、牛)、菜の花、ひよこ豆、モロヘイヤ


葉酸の食材とサプリの吸収率の違いが気になる方はこちらの記事を見てくださいね。

 

ビタミンB12

 ビタミンB12は全身に酸素を運ぶ赤血球を作るため、葉酸や鉄と共に、貧血対策には欠かせないビタミンで「造血ビタミン」とも呼ばれます。妊娠期、授乳期はとくに多く必要なビタミンで推奨量も多く設定されています。

 

機能
・全身に酸素を運ぶ赤血球をつくる ・神経伝達を円滑にする
 葉酸と一緒に酸素を運び、食べたものをエネルギーに変換します。  傷ついた神経細胞を正常に戻し、手足のしびれや肩こりを和らげる働きもあります。

 

欠乏症
 鉄を十分にとっていても葉酸とビタミンB12を摂っていないと悪性貧血になることがあります。

 

過剰症
 ビタミンB12は胃から分泌される内因子を介した吸収機構が飽和すれば食事中から過剰に摂取し ても吸収されません。現時点で ビタミンB12の過剰摂取が健康障害を示す科学的根拠がないため、耐容上限量は設定されていません。
おすすめの食べ物
 赤貝、ほっき貝、レバー(鶏、豚、牛)
 
 
 

まとめ

 今回は水溶性ビタミンの中でもビタミンB群について紹介しました。過剰症や欠乏症についても理解できましたか?微量栄養素ですが、エネルギーに変換するに欠かせない栄養素になります。普段の食事の選択も意識して、しっかり栄養素を摂って過ごしていきましょうね!

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監修:管理栄養士 岡部 遥

参考文献
(※1)もっとキレイにずーっと健康 栄養素図鑑と食べ方テク 中村丁次監修 朝日新聞出版
(※2)厚生労働省 日本人の食事摂取基準2020年版 水溶性ビタミンhttps://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586563.pdf

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