新型コロナウイルスの影響で「免疫」という言葉を良く耳にします。外出規制も引き下げられてくる中、仕事の再開、登校の再開と外出する機会が増える家族の健康が心配になってはいませんか? 今回はこれからより敏感になっていく健康意識の中で免疫を意識するなら、どんな栄養素を摂るべきなのか、またその具体的な方法を紹介します。

 免疫、免疫力の説明はこちらの記事をご覧ください。

これさえ読めばわかる「免疫力 とは?」の疑問を分かりやすく解説!



免疫力を維持する栄養素

 感染を避けるために重要な手段は、手洗い、うがい、人が多いところを避けるなどウイルスに感染しない行動をとることです。
 一方、これらの手段をすり抜け体内にウイルスが侵入してしまった場合は、体の防衛反応、防御反応として働く、免疫機能の出番となります。 この免疫機能が正常に機能するためには多くの栄養素が関連しています。今回は日頃食品や料理から摂っている栄養素がどのように免疫力に作用しているのか公益財団法人日本栄養士会※1、イギリス栄養士会の2つの報告書をもとに紹介していきます。※2

 

免疫システムに関わる栄養素

 免疫システムが正常に機能するにはこれらの栄養素が関わっています。

▶栄養素:たんぱく質、n-3系脂肪酸、食物繊維
▶脂溶性ビタミン:ビタミンA、ビタミンD,ビタミンE、
▶水溶性ビタミン:ビタミンB群(ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸、パントテン酸、ナイアシン、ビオチン)、ビタミンC
▶ミネラル:鉄、亜鉛、銅、セレン

 一方で、特定の栄養素を過剰に摂ったとしてもウイルスや菌に対しての抵抗力を増やすことはできません。注目するポイントは、不足することで免疫システムが機能しにくくなり、ウイルスに対する抵抗性が低下するという点です。
 ではこれらの栄養素は、免疫システムにどのように作用しているのでしょうか。ここから、タンパク質、ビタミン、ミネラルに分けて具体的に紹介していきます。

 

低栄養状態を防ぎ、免疫を支える「たんぱく質」

 疫機能の低下を抑えるためにはタンパク質のなかでも良質なタンパク質と言われる卵や肉類の摂取をすることがおすすめです。たんぱく質が不足すると身体は低栄養状態(健康な体を維持するために必要な栄養素が足りない状態)になりやすくなります。

 特に高齢者で食事も趣味嗜好に偏り、低栄養の予備軍となるような方はインフルエンザワクチンを打っても抗体陽性率(効果を発揮する率)は著しく低下すると言われています。
 結果として免疫力の基本がバランスの良い食事を摂ることに繋がると言えます。
 ※最近では、タンパク質を摂らずに野菜に偏った食事やその逆のように趣味嗜好に偏ることで、食事を3食とっていても、低栄養と診断されるケースが多くなってきています。低栄養の診断は血液中のアルブミン値の低下により判断されます。

 

代謝をサポートする「ビタミン」

 脂溶性ビタミンや水溶性ビタミンは、細胞の代謝をサポートする際にも使われます。ビタミンが不足すると免疫力に関与する細胞の機能低下に繋がる可能性があります。

 最近とくに不足しがちな栄養素で言えば、日光を浴びることによって体内で作られるビタミンDです※。食品からも摂ることができますが、外出する機会が少なくなった分、意識して摂るべき栄養素と言えます。ビタミンDはサケ、イワシ、マス、ニシン、ウナギなどのあぶらの多い魚に多く含まれています。ビタミンD以外のビタミンも食品で摂るのが難しいというかたにはサプリメントでの摂取がおすすめです。 

 2020年5月6日に研究、教育、専門領域で情報を発信する「スプリンガーネイチャー」に掲載された報告ではヨーロッパの高齢者のビタミンD血中濃度と新型コロナウイルスの予防と死亡率に関係があるのではないかという報告がされています。

 (この報告データはビタミンDとコロナウイルス専門の研究結果ではないため、この報告の著者は詳しい研究の実施を求めています。元にしているデータは各国によって検査方法が異なるため正確ではありません。1つの可能性の示唆として紹介されています。)

 

欠乏すると免疫低下をまねく「ミネラル」

 ミネラルの欠乏は、抗体(外敵に反応して異物に反応し、身体から除去する機能を持つタンパク質)の活動を低下させます。現代人のミネラルの摂取は決して足りているとは言えません。日本人の食事摂取基準(2020年版)では13種類のミネラルを必須ミネラルと設定し、摂取量を定めています。

 ミネラルは薬局などでもサプリメントでよく目にしますが偏った摂りかたをすると、その他のミネラルの吸収を阻害するという報告もあります。※3

 

不足しがちなミネラルと過剰摂取の注意点

過剰に摂取した場合(※3)

カルシウム

鉄、亜鉛の吸収阻害

リン

カルシウムの吸収力低下

亜鉛

銅、マグネシウムの吸収阻害

モリブデン

銅の吸収阻害


 このように繊細なバランス関係を持つミネラルですが、大切なことは効率さよりも食事からこまめに摂ることです。ここでは免疫システムに関わると紹介したミネラルの中から日本人が不足しがちものを選び、おすすめの食材として紹介します。

カルシウム日本人全体として不足しがちなミネラル。
  おすすめの食材:干しエビ、牛乳、チーズ、がんもどき(木綿豆腐も)、小松菜

女性の多くは鉄が不足しています。鉄分の不足は筋肉に酸素を十分に送ることが出来ずに疲労感や筋力低下につながると言われています。
  おすすめの食材:レバー、大豆製品、牛もも肉、貝類、小松菜

▶亜鉛とくに男性に不足していると言われています。玄米などに含まれる「フィチン」は亜鉛と結合して吸収率が下がると言われています。
  おすすめの食材:牛肉(赤身)、牡蠣、納豆、卵黄、うなぎ

 食事での摂取が難しい場合は、サプリメントで適量を摂取することもおすすめです。サプリメントを購入する際は自己判断で1つに偏り過ぎず、自分の健康状態に合わせてしっかりと選びましょう。

 

まとめ

 免疫力と栄養素の関連性についてお分かりいただけたでしょうか? ウイルスに感染しない行動(手洗い、うがい、人が多いところを避けるなど)をとりつつ、栄養もしっかりとって免疫力を維持していくことが免疫力を支えることに繋がります。
 一方、日本栄養士会の報告では、肥満や糖尿病等の食事による過剰栄養も免疫力の低下に繋がると言われています。免疫力を維持するためにも栄養素の摂り過ぎには注意には気をつけましょう。
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 免疫、免疫力の詳細はこちらの記事をご覧ください。

これさえ読めばわかる「免疫力 とは?」の疑問を分かりやすく解説!

 

監修:医学博士 久保 明
   管理栄養士 岡部 遥

参考文献)
※1イギリス栄養士会 新型コロナウィルスについて
※2 日本栄養士会 新型コロナウイルスの状況下、今、栄養指導に必要な一般生活者へのアドバイス
※3 日本人の食事摂取基準(2020 年版)2019年12月 「日本人の食事摂取基準」策定検討会

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