暑い夏も、寒い冬もどちらでも危険性が高まる食中毒には種類があることをご存知ですか? 食後、急に腹痛を感じた時、その原因は食事だけでなく、調理器具や自分の手の中に潜んでいることも…!

 今回は、除菌や衛生管理が意識されるようになったコロナ禍であっても、自炊やテイクアウト食品でも気をつけなければならない冬の食中についてご紹介します!

 

 

冬に多い食中毒一覧

 冬は海産物を食べる機会が多くなり、夏よりもウイルス性の食中毒にかかるリスクが高まります。その主な食中毒がこちら、主な原因と、症状も合わせて紹介します。

 

原因菌名 原因・症状
・腸管出血性大腸菌(O157など) 【原因】
・肉類の生食
・またはレアな状態などでの加熱不十分な調理
・トイレ後や、乳児のおむつを変えた後の手洗い不足

【症状】
・発熱:(37~39℃以上になることも)
・急性胃腸炎症状:
 激しい腹痛や、水のような下痢、出血をともなう下痢
サルモネラ菌
(鶏肉や卵に注意)
【原因】
・生、または加熱不十分な卵料理
・食肉製品、乳製品

【症状】
・発熱:(37~39℃以上になることも)。
・急性胃腸炎症状:
 激しい腹痛や、吐き気、嘔吐、水気の多い下痢や粘り気のある下痢
腸炎ビブリオ
(海産物に注意)
【原因】
・海水
・魚介類の刺身、お寿司、お弁当など

【症状】
・急性胃腸炎症状:
 激しい腹痛、下痢、嘔吐など
 下痢は血液がにじんだ粘り気のあるものが多く、10数回に及ぶことも潜伏時間が短いほど重症化しやすい
黄色ブドウ球菌
(調理中に注意)
【原因】
・指などにケガをした状態での調理
・咳やくしゃみなどの飛沫が料理に飛ぶことによって感染

【症状】
・神経の1つ、嘔吐中枢へのダメージ:
 吐き気、嘔吐、寒気、悪心(おしん)が起きる症状
・急性胃腸炎症状:腹痛や下痢など
ウエルシュ菌
(保存方法に注意)
【原因】
・作ってから時間がたったカレーやシチュー

【症状】
・初期はお腹が膨れ、張った感じ
・腹痛や下痢などの症状
・下痢は数回で快方することが多く、発熱や嘔吐はあまり見られない
ノロウイルス
(冬の魚介類に注意)
【原因】
・生牡蠣や二枚貝
・二枚貝などを触った手による2次感染
・感染者のおうと物、つばや手、排便による2次感染

【症状】
・初期は吐き気
・徐々に発熱、ダルさ、嘔吐、下痢、腹痛、高熱
・症状は個人差があり、小児や高齢者では重症になりやすい

 

 食中毒は風邪と勘違いしやすいことも有りますが、ノロウイルスのように1度発生すると家族全員に広がりやすいものもあり、重症化すると意識障害や最悪の場合、命に関わるものもあります。

 自宅で調理することが多くなるwith コロナ時代だからこそ、おうちでの食中毒は注意しましょう。ここからは、その他の食中毒と、それぞれの対策方法もチェックしていきましょう!

 

食中毒の対策は?

 家庭で対策する場合は、まずは自炊時とテイクアウト時で以下のことを守りましょう。

自炊の場合

 自炊時の対策・注意点

 ・手を良く洗う。
 ・調理中もこまめに洗う。
  ※生肉を触った後、鼻をかんだ後、動物に触れた後、保存する食品を触る前など。
 ・卵、鮮魚、生肉は購入後、すぐに冷蔵庫で保存する。
 ・まな板やスポンジは調理器具と食器用で分け、離れた場所で保管する。
 ・生物を使用した後は熱湯をかける、煮るなどして熱消毒する。

 

 

テイクアウト・デリバリーする場合

 withコロナ時代で、テイクアウト商品を買うことも増えました。お家で美味しい食事が食べられるのはとても嬉しい半面、食中毒リスクが高くないかも注意しましょう。

 テイクアウト・デリバリー時の対策・注意点※3

 ・生モノのテイクアウトは控える。
 ・水分が出にくい、小分けにされているなど傷みにくい工夫が容器にされているか。
 ・半熟やレアな焼き加減の料理は控える。
 ・10℃以下で保存されたものを保冷剤で保存し持ち帰る。
  ※熱々で届くのは嬉しいですが、食中毒菌の多くは20~50℃で繁殖しやすくなります。
 ・すぐに食べきる。常温で放置しない。

 

原因菌ごとの対策方法

 食中毒では、原因菌ごとに対策や温度管理も異なります。重要なのは食中毒の原因菌を「つけない・ふやさない・やっつける」という3つの原則です。

 食中毒対策の原則
 ①つけない
 ②ふやさない
 ③やっつける

 多くの食中毒原因菌は、加熱をしっかりとすることによって死滅します。2次感染を防ぐには、調理器具や初期、手洗いの徹底が重要です。ここからは、冬だからこそ気を付けたい食中毒の原因菌とその対策方法をチェックしておきましょう。 

▶サルモネラ菌(卵・鶏肉・肉類)
【特徴】
・酸素に強い
・熱に弱い

【活性化温度】
・30~37℃

【対策】
・卵は10℃以下で保存する。
・まな板、包丁、スポンジなどは野菜類と分ける。
・卵は生食、生焼けは控える。調理後はすぐに食べきる。
・ペットは調理場には入れない

【加熱時間】
・十分な加熱で死滅
・75℃で1分以上の加熱

 

▶腸炎ビブリオ(魚介類)
【特徴】
・塩(塩水)に強い
・真水に弱い
・熱に弱い
・環境が整うと増殖が速い

【対策】
・まな板、包丁、スポンジなどは野菜類と分ける。
・魚介類は繁殖を防ぐために4℃~10℃以下で保存する。
・淡水に弱いため、魚介類は真水でよく洗う。
・冷凍品や冷凍する場合は他の食品と分けて保存する。

【加熱時間】
60℃で10分以上

 

▶黄色ブドウ球菌(手指の傷、くしゃみ)
【特徴】
・酸素に弱い

【活性化温度】
・35~40℃

【対策】
・ケガをしている指や手で調理をしない。
・ヒトの肌や鼻の穴の中に存在するため、調理中は肌や鼻を触らない。
・ケガをした状態で食器や調理器具を触らない、洗わない。

【加熱時間】
・80℃で10分間※
 ※菌は死滅しても、菌が生み出した毒素は100℃で35分間加熱しても壊れないため、増殖させないことが重要。

 

▶ウェルシュ菌(カレーやシチューなどのとろみのある料理)
【特徴】
・酸素に弱い

【活性化温度】
・43℃~46℃

【対策】
・増殖させないために、食品加熱後はすぐ食べきる。
・保存する場合は、加熱後すぐに5℃以下で保存する。
・空気が苦手なので、小分けにして保存する。
・保存したものは食べる直前に再加熱する。

【加熱時間】
・60℃で4分間※
 ※菌は死滅しても、菌が生み出した毒素は100℃で35分間加熱しても毒素は壊れないため、増殖させないことが重要。

 

▶ノロウイルス(牡蠣やホタテなどの二枚貝)
【特徴】
・食品上では増殖はしない
・体内で増殖する
・微量でも感染

【対策】
 調理後はすべての調理器具を煮沸消毒する。
 まな板、包丁、スポンジなどは野菜類・食器類と分けて対策する。

【加熱時間】
・貝類は85~90℃・90以上の加熱をすること。

 冬に特に気を付けたいノロウイルスは、とくに生食用のカキから感染することが多い食中毒です。
 栄養士や調理従事者は、感染を防ぐために生魚や二枚貝を食べるのは控えるように言われるほどです。

 
 冬の味覚として格別な美味しさを誇る貝類ですが、感染しないように取り扱う際は加熱したものを選ぶなど十分に注意しましょう。

【管理栄養士監修】牡蠣の食当たりの原因は?症状や対策を紹介!

 

 

食中毒の原因は食品が原因?

 勘違いされやすいのは食中毒は食品だけが原因ではありません。調理に使ったまな板や食器を洗ったスポンジや食器、またはケガをした傷口にいる菌なども原因に含まれます。食中毒はそれらが元になっておきた腹痛や嘔吐などの症状全般をさします。※1

▶食中毒の感染リスクは?
 食中毒の原因には大きく細菌・ウイルス・自然毒・化学物質があります。それぞれ感染リスクは異なります。
 例えば、細菌性や自然毒は同じ食事をしない限りほとんど感染する可能性はありません。一方で、ウイルス性の食中毒は調理している人や、同じ場所で食事をした人、感染源となる食材を使用した調理器具によって大勢に感染するリスクがあります。

 例外として、2020年11月には出汁パックを長時間煮込んだことによって、出汁パック内の成分からアレルギー様物質である「ヒスタミン」が発生し、給食を食べた1~6歳の園児に食中毒症状がでたというニュースもありました。

 出汁パックの多くは赤身魚を使用していないこともあるため全ての出汁パックに注意する必要は有りませんが、赤身魚を使用したみりん干しなどの食品は保存期間を守り、出汁パックなどは水気のない冷暗所で保存し、煮る時間はメーカーの表示時間を守ることが重要です。 

 

▶食中毒の流行時期は?
 食中毒と気温は密接に関係しています。まず気温が高くなる8月頃の食中毒者数は全体の約60%を占めるとも言われています。感染型や毒素型は夏場に多くみられる食中毒です。

 一方で、夏には身を潜め、気温が低くなると患者数が上がる食中毒もあり、これはカキなどの二枚貝が原因になりやすいウイルス性の食中毒が多くの原因と言われています。他にも山菜シーズンには自然毒のきのこによる食中毒が多くなります。

 

コロナ禍に気を付けたい食中毒一覧とその対策

 コロナ禍になり、外で食事をすることが減った分、お店などで食中毒にかかるリスクは減りましたが、自宅で調理をする機会が増えた分、食品や器具の取扱いにはより気を付けましょう。ここからは、家の中で気を付けたい食中毒の原因菌を一覧で紹介していきます。

 

サルモネラ菌

 サルモネラ菌は多くは生や、半生の鶏卵を食すことによって起きます。対策には食材の温度管理と、しっかりと加熱することが重要です。

▶存在する場所・食品主に鶏肉、鶏卵。その他の動物性食品。

 

▶主な感染原因:
 サルモネラ菌を保有する動物由来の食品。とくに半熟状態の卵料理が原因となりやすい。
 例)オムレツ、卵焼き、自家製マヨネーズ、伊達巻、卵を使用した丼ぶり、卵かけご飯。食肉製品・乳製品など

▶潜伏期間:6~72時間(食事をしてから2日以内に発症することが多い。)

▶症状急激な腹痛や嘔吐、発熱(38~40℃以上になることも)。
     急性胃腸炎症状:主に吐き気や嘔吐、水気の多い下痢や粘り気のある下痢など。

▶対策主な原因である卵類は生の部分が残らないように、良く加熱する。
 例)調理法:
 ①食材の中心部が75℃以上で1分加熱する。
 ②調理後はすぐに食べきる。
 ③ペットはサルモネラ菌を保有している可能性が高いため、調理場には入れないように注意する。

▶買物時のチェックポイント!
 10度以上ではサルモネラ菌などの繁殖に繋がるため、卵を購入した際は冷蔵庫で保存する際も、卵は温度が変化しやすい扉のポケットなどは避けて、温度は変化しにくい下段にしまうようにしましょう。

 

 

腸炎ビブリオ:夏に多い

 

 腸炎ビブリオは魚介類を通して、食中毒症状が現れます。対策には、食品の温度管理と、真水で良く洗うこと、よく加熱することが重要です。

▶存在する場所・食品海中。海産物。

▶主な感染原因:
 原因となる魚介類などの食品上で繁殖し、数百万個の菌を摂取して初めて感染します。
 食品例)魚介類の刺身、お寿司、お弁当など。

▶症状
 菌が増殖することにより腸内壁の壊死(細胞が死ぬこと)による激しい腹痛、下痢、嘔吐など。
 下痢は血液がにじんだ粘り気のあるものが多く、10数回に及ぶことも。潜伏時間が短いほど重症化しやすくなります。

▶潜伏期間8~24時間で発症。(2~3時間で発生することも)

▶対策:生の魚介類は必ず10度以下(4度以下が最適)で保存する。塩水に耐性があるが、水道水(淡水)に耐性がないので、冷水でよく洗う。 

 

 

腸管出血性大腸菌(O157)

 大腸菌はその名前の通り、大腸に多く存在する最近です。O-157などの名前でも聞いたことがあるかもしれませんが、動物やヒトの大腸菌には一部、食中毒を起こすものがあり、大腸菌に汚染された食肉や水などから集団で感染します。集団で感染する可能性もあるため、感染症法では3類感染症※に定められています。

 

 ※3類感染症:3類感染症とは、感染力があり、かかった場合、重症になる可能性は低いが、特定の職業への就業によって感染症の集団発生を起こし得る感染症のことです。2類、1類と数字が小さくなるにつれて、重症度と感染度が高くなります。

▶存在する場所・食品:大腸菌に汚染され加熱が不十分な食肉・レバーなど。また、汚染された水。

▶主な感染原因:
 人間や家畜など哺乳類は大腸菌を保有しているので、住居内での感染、牛肉などの食品が汚染されていることによる感染が原因として多い。

 また、山や川の水が野生動物の糞などに汚染されていることから、それらを飲んだことにより、感染することも考えられる。
 例)牛肉やレバーなどの生食、生焼け状態の牛肉。汚染された手による調理品など。

▶症状:大腸菌が体内に侵入し、腸管に定着してから増殖する。その際にベロ毒素(VT)と呼ばれる、毒素を産生する。この毒素が腸管に付着すると、細胞を破壊し、粘り気のある血便や下痢、腹痛を起こす。放置すると、数日後に(2週間以内に)ベロ毒素が腎臓の細胞や、中枢神経細胞に集まり、痙攣や意識障害※などを発症し、最悪の場合、死に至る。※溶結性尿毒省症候群(ようけつせいにょうどくしょうしょうこうぐん)

▶潜伏期間:4~8日間。(平均5日間前後)で発症。 

▶対策:
 少量でも汚染された食品を通して発症するため、生野菜はよく洗い肉類同様、十分な加熱を徹底する。
 冷蔵庫内の食品は早めに食べること。
 

 

カンピロバクター

 他の食中毒の原因菌と違い、45℃前後の高温でも発育することができる特徴をもちます。
 逆に乾燥、加熱、酸性には極めて弱いのが特徴です。一見、普段の生活で感染しそうにないのですが、加熱が不十分な鶏肉や、殺菌が不十分な井戸水などの地下水から感染する場合が多い食中毒です。

 

▶存在する場所・食品:加熱不十分の食肉(とくに鶏肉)、殺菌が不十分な井戸水などの地下水。

▶主な感染原因:食肉をよく加熱しないことによっておきますが、生肉をあつかったまな板や、お皿、手、食器を洗うスポンジなどからも2次汚染、感染することがあるため、注意が必要。
 例)生焼けの鶏肉。井戸水(地下水)。加熱処理していない牛乳。生肉を触った手や調理器具を通した2次感染。

▶症状:初期書状は軽く、腹痛や下痢などの症状から風邪と勘違いしやすいが、進行すると水っぽい便や下痢が増え、進行するにつれて、血液が混ざったり、強い腐敗臭を感じる血便が多くなる。重症化すると、38℃以上の高熱がでる。

▶潜伏期間:2~7日で発症。

▶対策:食肉、とくに鶏肉はしっかりと加熱する。生肉を触った手や調理器具は良く洗浄し、熱湯をかける、煮るなどして消毒する。生の牛乳や地下水は飲まないようにする。

 

 

黄色ブドウ球菌

 黄色ブドウ球菌による食中毒は、普段の生活でもっとも身近な食中毒の1つです。症状が軽く、病院にかからずにそのまま完治することも多いため、風邪と勘違いされる場合も多い食中毒です。一方で、2000年には低脂肪牛乳に黄色ブドウ球菌が繁殖したことにより、14,780人の患者を出した菌でもあるため、しっかりと対策をチェックしておきましょう!

 

▶存在する場所・食品:ケガをした状態での調理。

▶主な感染原因:黄色ブドウ球菌は、主にヒトの肌やケガなどで化膿した場所、また鼻の穴の中に常に存在する。黄色ブドウ球菌自体では食中毒は起きず、黄色ブドウ球菌が作り出す、100℃で35分間、加熱しても壊れない菌「エンテロトキシン」を摂取することが原因で感染する。

▶症状:食品と合わせて、摂取した菌によって神経のひとつ、嘔吐中枢が刺激され吐き気、嘔吐、寒気、悪心(おしん)が起きる症状。また、胃腸などにも影響を与え、腹痛や下痢などの症状を出す。

▶潜伏期間:食後、1~6時間で発症し、多くは3~4時間で症状が現れる。

▶対策:手指の消毒を徹底する。ケガをしているときは調理を控えることがもっとも確実。 
 一方で、加熱などで黄色ブドウ球菌自体は死滅しても、それ以前に作られた「エンテロトキシン」は死滅しないため、作り置きや、保存する前の下ごしらえなどで食材を触るときにも消毒と、ケガをしているときは調理を控えることが重要です。

 

 

ボツリヌス菌

 

 ボツリヌス菌は1951年に北海道で、ニシンの「飯鮨(いずし)」から確認がされ、それ以降は魚類の洗浄方法が改善したことによって、今ではほとんどみられることはありません。

 一方で、ボツリヌス菌が作り出す毒素「エンテロトキシン」は、脳の中枢神経作用する神経毒のため致命率がとても高く、感染した場合は正しい処置が必要となります。
 ※エンテロトキシン:100℃以上35分以上熱しても死なない毒素の一種。

▶存在する場所・食品:家畜や魚類などの腸管に存在し、菌が食品上で繁殖する中で発生する。また、ボツリヌス菌だけでは食中毒にならず、菌が生み出す毒素が原因となり症状を生み出す。
 例)真空パックの加工食品。缶詰、瓶詰。日本では魚由来の製品や、過去には辛子蓮根などで確認されている。海外ではハム・ソーセージ。ハチミツ※1。
 ※1 乳幼児ではハチミツが原因となる乳児ボツリヌス症が知られ、1歳児未満にハチミツを与えることは消費者庁でも止めるように注意喚起がされています。症状は便秘、全身の筋力低下、脱力状態、哺乳力の低下、無表情などで治療により症状は改善しますが、最悪の場合、死に至るケースもあるため、乳幼児の離乳食などでは十分に注意しましょう。

▶主な感染原因:ボツリヌス菌は空気が嫌いな菌で、畑などの土壌や、海泥(かいでい)にも含まれていますが、感染の原因となるのは瓶詰や真空パックなどの食品が主です。

▶症状:初期症状は吐き気、嘔吐、下痢などの胃腸炎症状があるが、多くの場合、倦怠感、脱力感、めまい、複視、嚥下困難、腹部膨張などの神経症状が現れます。最終的には呼吸困難、麻痺などに約25%の確立で死に至ると言われています。これは細菌性の食中毒の中ではもっとも高い致死率です。

▶潜伏期間:12~36時間。(人によって大きく差がある)

▶対策:
 ①魚や野菜は低温の水にさらしたり、十分にすすぐ。
 ②常温で長期保存された缶詰、瓶詰、レトルト食品は120℃以上、4分間以上、そして高圧の条件で殺菌する。
 ③袋や缶詰が膨張している物は絶対に食べない。

 

ウェルシュ菌
 

 100℃でも死滅しない毒素を作りだし酸素が嫌いな特性を持ちます。一方で、シチューやカレーなどの粘り気のある料理は空気に触れにくく、再加熱しても菌が死なずに残りやすく、食中毒症状が現れます。

▶存在する場所・食品:土壌や、水、動物やヒトの体内にローストされた肉や、大量に煮込まれたシチューやカレー。

▶主な感染原因:シチューやカレーなどからウェルシュ菌が食品と一緒に小腸に吸収される際に小腸内で形成する毒素エンテロトキシン※を作り出す。
  
※エンテロトキシン:100℃以上35分以上熱しても死なない毒素の一種。

▶症状:初期はお腹が膨れ、張ったように感じ、徐々に腹痛や下痢などの症状。下痢は数回で快方することが多く、発熱や嘔吐もほとんど見られない。

▶潜伏期間:食後8~24時間

▶対策:カレーやシチューの作り置きは止める。保存する際は、増殖を防ぐために作ってからすぐに5℃以下の温度で冷蔵する。冷蔵したものは、食べる直前によく加熱する。

 

 

ノロウイルス

 ノロウイルスは貝に蓄積したウイルスを少量摂取しただけで食中毒症状が現れます。感染リスクも高く、冬の食中毒ではもっとも注意したい食中毒です。

 

▶存在する場所・食品:
 二枚貝などの貝類。とくに生カキ。貝類などについてウイルスから2次感染した野菜などの食品。

▶主な感染原因:
 ノロウイルスは貝には蓄積するだけで、増殖は出来ません。増える場所はヒトの小腸内で、排せつされたウイルスが海に戻り、また貝類に蓄積するという貝とヒトとのループで起こされる食中毒です。

▶症状:
 初期は吐き気を催し、発熱、嘔吐、激しい下痢、腹痛と悪化していく。症状は個人差があるが、小児や高齢者では重症になりやすい。

▶潜伏期間:1~2日(3日以内)

▶対策:抗生物質や紫外線などもウイルスには効かないため、頻繁な手洗いが必要です。十分な加熱(85~90℃以上~90秒以上)が重要です。

 

最後に

 最後に原因食材となりやすい食材別で対策を確認しましょう!

・鶏卵、鶏肉は購入後すぐに低温で保存し、よく加熱する。
・牛肉や豚肉は購入後すぐに冷蔵保存し、よく加熱する。
・魚介類は低温で保存し、調理前は水道水を使い流水でよく洗い、しっかりと加熱する。
・井戸水や湧き水はそのままで飲まない。しっかりと煮沸して濾過してから飲む。
・シチューやカレーは加熱後、保存分はすぐに小分けにして5℃以下で保存(冷凍する)。
・冷凍した食品は食べる直前によく再加熱する。
・1歳児未満にハチミツは与えない。離乳食にもいれない。
・消費期限が切れ、膨張した缶詰やレトルト食品は食べない。
・二枚貝などの貝類はよく加熱する。
・生物を使用したまな板や包丁、食器はしっかりと熱消毒する。

 冬、家にいる機会が多くなるからこそ、家族全員で食事をする機会は多くなります。そんなときだからこそ食中毒は気を付けたいものです。

 一方で、食中毒は完全に防ぐことが難しいのが現実です。調理器具は衛生的に、肉類や魚類と野菜類ではまな板は変える。食器洗浄用のスポンジは調理器具用と食器用でわけるなどの対策をすることによって、普段から対策していきましょう。

【管理栄養士監修】牡蠣の食当たりの原因は?症状や対策を紹介!

 

野菜の栄養素の失われ方「知って得する調理法の違い」

 


監修: 岡部遥
管理栄養士。NRサプリメントアドバイザー。 栄養教諭一種免許状取得。特別養護老人ホーム勤務後、ドリコス株式会社でオーダーメイドサプリメント抽出のアルゴリズム制作、栄養情報の配信を担当。

 

参考文献

※1 簡明 食品衛生学 光生館 著者菅谷 祐輔 第4版

※2 政府広報オンライン 明日の暮らしをわかりやすくする「暮らしに役立つ情報ー食中毒を防ぐ3つの原則・6つのポイント」 https://www.gov-online.go.jp/featured/201106_02/index.html#:~:text=%EF%BC%882%EF%BC%89%E5%A2%97%E3%82%84%E3%81%95%E3%81%AA%E3%81%84%EF%BC%9D%E4%BD%8E%E6%B8%A9%E3%81%A7%E4%BF%9D%E5%AD%98%E3%81%99%E3%82%8B%EF%BC%81&text=%E9%A3%9F%E3%81%B9%E7%89%A9%E3%81%AB%E4%BB%98%E7%9D%80%E3%81%97%E3%81%9F%E8%8F%8C,%E9%A3%9F%E3%81%B9%E3%82%8B%E3%81%93%E3%81%A8%E3%81%8C%E5%A4%A7%E4%BA%8B%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82

※3 厚生労働省 「食中毒―テイクアウト・デリバリーにおける食中毒予防」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/index.html

※4 東京都福祉保健局 食品衛生の窓 「サルモネラ属菌」 https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin/micro/sarumone.html

※5 東京都福祉保健局 食品衛生の窓 「腸炎ビブリオ」 https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin/micro/tyouen.html

※6 東京都福祉保健局 食品衛生の窓 「腸管出血性大腸菌O157」 https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin/micro/o157.html

※7 東京都福祉保健局 食品衛生の窓 「ウエルシュ菌」 https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin/micro/uerusyu.html

※8 東京都福祉保健局 食品衛生の窓 「カンピロバクター・ジェジュニ/コリ」 https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin/micro/campylo.html

※9 東京都福祉保健局 食品衛生の窓 「黄色ブドウ球菌」 https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin/micro/oushoku.html

※10 東京都福祉保健局 食品衛生の窓 「ボツリヌス菌」 https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin/micro/boturinu.html

※11 東京都福祉保健局 食品衛生の窓 「ノロウイルス」 https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin/micro/noro.html

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