夏は岩牡蠣、冬は真牡蠣とどの季節も美味しい牡蠣。生でも、加熱してもおいしい牡蠣ですが、食当たりが気になって、なかなか食べれない方も多いのではないでしょうか。
今回は旬の牡蠣を安全においしく食べるために、食当たりの原因、症状、対策方法を紹介していきます!
牡蠣はなんで食あたりするの?
▶牡蠣の食当たりの原因は
牡蠣の食当たりの原因はノロウイルス・腸炎ビブリオ・貝毒・アレルギー等が挙げられますが、主な原因は「ノロウィルス」と「腸炎ビブリオ」と言われています。
牡蠣は1粒あたり1日約300Lの海水を取り込む中でプランクトンなどの栄養源を吸収、排出することを繰り返しているため、栄養成分がぎゅっと濃縮しています。しかしその分、食あたりに関わる有害物質も蓄積しやすいため、食当たりが起きやすくなります。
▶新鮮でも食中毒を起こすことがある
「ノロウィルス」は加熱すると感染のリスクを下げることができます。「生でも新鮮だから大丈夫!」というのは感染リスクには関わりません。新鮮なものでも、生の状態で食べると食当たり・食中毒を起こすリスクは高まります。
また、ノロウイルスだけでなく、食中毒の原因となりやすい「ノロウイルス」や「腸炎ビブリオ」は流通する過程や調理中のまな板・調理器具などを介した2次汚染により食中毒を起こす場合があります。(※1)
食中毒になった時の対応方法
▶高齢者や幼児はすぐに受診を
高齢者や幼児は免疫力が低く、成人よりも重症化しやすい傾向にあります。牡蠣を食べた後に吐き気や腹痛を感じた時は、重症化する前にかかりつけ医に連絡・受診しましょう。
成人男性・成人女性で症状が軽い吐き気、少し便が緩いなど症状が軽めな場合は、脱水症状にならないように気を付けながら一時様子見つつ、すぐに受診できるようにしながら様子を見ましょう。感染しないのが一番ですが、牡蠣を食べるときは、水分をより吸収しやすい、スポーツドリンクや、経口補水液(OS-1など)を用意しておくことをおすすめします。
▶集団感染に注意
下痢、吐き気、おう吐、腹痛、発熱などが続く場合は、迷わず医療機関を受診しましょう。
一方で、ノロウイルスは感染者から感染が拡大するリスクがとても高いため、受診した際にも院内感染を防ぐ必要があります。受診する前には電話か、受付で牡蠣を食べたことや、ノロウイルスの可能性があることを必ず伝えましょう。
また、家庭内での集団感染を防ぐためにも、食あたりの可能性がある場合は、調理や火事は控え、個室で隔離するようにしましょう。ノロウイルスの場合は、トイレを使ったあとの消毒や、手を洗ったあとのタオルを家族と分けることも重要な対策です。
▶主な感染原因は?
・ノロウィルス
牡蠣や二枚貝などの生食、または加熱不十分な状態での飲食。2次感染として、感染者の咳、くしゃみや嘔吐物、下痢便、汚れた衣服には大量のウィルスがついているため、集団感染を起こす可能性があります。
・腸炎ビブリオ
一般的にヒトからヒトには感染しないと言われています。腸炎ビブリオは夏に流行することが多く、真水に弱いので、夏は食材を水で良く洗いましょう。食材は温かい場所に食材を放置しないように、家についてからすぐに冷蔵保存するようにしましょう。
牡蠣の食あたり・食中毒を予防するには
まずは、手洗いをしっかりと行うことが大切です。食当たりの可能性がある食材や人と接した場合は、感染を防ぐために汚れた手や衣服はすぐに洗いましょう。
家族で感染を防ぐには、手を洗ったあとのタオルを一人ずつわけることや、食事の際は小皿分けて料理を出すことなども有効です。
▶食事の予防
また、予防するには、食当たり・食中毒を防ぐために牡蠣の十分な加熱を行う必要があります。加熱時間は菌によって異なります。
食当たり対策の加熱時間(食品の中心温度) | |
ノロウィルス | 腸炎ビブリオ |
85~90℃で90秒以上 | 60℃以上で10分以上 |
▶ノロウィルス
二枚貝などのノロウイルス汚染の可能性がある食品は、食品の中心温度85~90℃で90秒間以上の加熱が必要です。(※2)
▶腸炎ビブリオ
牡蠣などの魚介類は加熱調理する場合60℃以上、10分以上で中心部まで充分に加熱が必要です。(※1)
腸炎ビブリオは真水(水道水)の中では増殖しないため、牡蠣等の魚介類は調理前に流水(水道水)で良く洗って菌を洗い流してください。
▶感染したあとの対策
もし家族に感染者が出た場合、幼児が感染した場合は子どもの便や吐しゃ物を処理する際には、直接手で触らずに使い捨ての手袋を付け、マスクをし、適切に処理したあと、ごみは袋に2重にして捨てましょう。ノロウイルスには、アルコールではなく、次亜塩素酸などを使用しましょう。
牡蠣の食当たり・食中毒の症状
今回は牡蠣の食当たり・食中毒に多い「ノロウィルス」と「腸炎ビブリオ」を中心に紹介します。
牡蠣は種類によって旬が異なります。中毒の原因は突き止められないケースが多いですが、この旬の時期に食中毒が起こることが多く、牡蠣は食中毒の増加に関連性があるのではないかと言われています。
▶冬は「真牡蠣」
一番多く食べられる牡蠣が真牡蠣です。春から夏に産卵期があり、秋から春に栄養をたっぷり含んだ牡蠣が育ちます。冬の牡蠣や二枚貝を通して起きやすい食中毒が「ノロウイルス」です。
▶「ノロウィルス」の症状
潜伏期間 | 1~2日 (3日以内に発症する) |
症状持続期間 | 通常3日以内 |
症状 | 吐き気 激しい下痢 腹痛 軽度の発熱 |
発生時期 | 1年中(冬に多い) |
▶注意点
・ノロウィルスには特効薬はありません。激しい下痢がすすむ場合は脱水症状とならないよう水分補給を行う必要があります。また、下痢止めの薬は使用しない方が良いと言われています。理由は体内のノロウィルスを体外に出そうとする腸の動きを止めてしまうためです。
・感染しても風邪のような症状で済む人もいます。
▶夏は「岩牡蠣」
岩牡蠣の産卵期は夏ですが、ゆっくり長期間産卵をしているため、栄養を損なうことなく育ちます。夏に多い海産物での食中毒が腸炎ビブリオです。
▶「腸炎ビブリオ」の症状
潜伏期間 | 4~36時間で発症 (12~15時間で発生することが多い) |
症状持続期間 | 2~3日 |
症状 | 吐き気 激しい 下痢 腹痛 軽度の発熱 |
発生時期 | 夏に多い |
▶注意点
・腸炎ビブリオに関しての特効薬はありません。
激しい下痢がすすむ場合は脱水症状とならないよう水分補給を行う必要があります。
・基礎疾患を有する方は速やかに受診しましょう。
最も多く食べられるのは冬が旬の真牡蠣で、食あたり・食中毒が多い冬の時期とリンクしています。
食当たり・食中毒は年末の12月に入ると患者が急激に上昇します。この時期は牡蠣の出回り時期とほぼ一致することや生牡蠣との喫食の関係性が高いことから、牡蠣の食中毒が多く占めていると言われています。(※3)
その他の貝類の食あたり・食中毒は?
貝は冬になるととくに食中毒のリスクが高くなります。また、貝の中でも特に注意したいのが、牡蠣などもふくまれる二枚貝です。なぜ二枚貝のリスクが高いのか確認していきましょう!
▶二枚貝とは
二枚貝とは食中毒は牡蠣やほたて、しじみ等の殻が2枚で構成されている貝のことを言います。二枚貝以外の貝ではサザエやアワビがあり、海藻を主食にしているため、ノロウィルスに感染することはほとんどないと言わています。
また二枚貝はノロウィルス、腸炎ビブリオに加えて貝毒(かいどく)といった食中毒が起こることがあります。
▶貝毒(かいどく)とは
貝毒とは、主に二枚貝(ホタテガイやアサリなど)が毒素を持った植物プランクトンを餌として食べることによって、体内に毒を蓄積させる現象です。(※4)毒性分は熱に強く、加熱調理では毒性はほとんど弱くなりません。
日本は毒が蓄積した貝を食べると麻痺性貝毒や、下痢性貝毒が多いと言われています。貝毒は、加熱処理しても死滅しない為、貝毒になっている貝を食べない事が対処法となります。貝毒に感染した生牡蠣は、綺麗な海水で浄化する事によって毒素が抜けます。
まとめ
牡蠣の食あたりの原因や食あたりの時の対応方法は理解できましたか? 調理時の注意点はもちろん、基礎的な予防として「手洗い」を重視し、自分も周りも安全に食事を楽しめるようにしていきたいですね。
ご消化したように、食材に旬があるように、食中毒にも季節ごとに流行があります。おいしく安全に旬の食材を楽しむために、食中毒についてさらにチェックしたい方はこちらから!
【管理栄養士監修】夏だけだと思ってない? おうち時間こそ気を付けたい食中毒一覧
監修: 岡部遥
管理栄養士。NRサプリメントアドバイザー。 栄養教諭一種免許状取得。特別養護老人ホーム勤務後、ドリコス株式会社でオーダーメイドサプリメント抽出のアルゴリズム制作、栄養情報の配信を担当。
参考文献
(※1)東京都福祉保健局 食品衛生の窓 腸炎ビブリオ https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin/micro/tyouen.html
(※2)東京都福祉保健局 食品衛生の窓 ノロウィルス https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin/micro/noro.html
(※3) 簡明 食品衛生学 第4版 光生館、著者 菅谷 祐輔
(※4)農林水産省 貝毒の特徴 https://www.maff.go.jp/j/syouan/tikusui/gyokai/g_kenko/busitu/01a_tokucyo.html
管理栄養士。NR・サプリメントアドバイザー。栄養教諭一種免許状取得。特別養護老人ホーム勤務後、「栄養」によって幅広い世代の生活を支えたいと思い、ドリコスに参画。食べることが大好き。乳製品が好きでよくヨーグルトを食べている。