妊娠期手に取ることが多くなるハーブティー。
 リラックス効果も期待できる飲み物ですが、ものによっては飲み過ぎや、摂ることに注意必要なものもあるということをご存知ですか?

 今回は、情報に敏感になりやすい妊娠期に気を付けるべきハーブと飲み物をご紹介します!

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「ノンカフェインなら飲んでいいの?」妊娠中にOKな飲み物一覧をチェック!

 

 

妊娠期に注意すべきハーブとは?

 妊娠期、カフェイン飲料を制限されることから、飲み始める方が多いハーブティーですが、中には安定期になるまでに服用を避けたいものがあります。

 ハーブはリラックス効果のように、痛みの鎮静や、肝臓の働きをサポートするものなどがあります。薬までの効果なくても、昔からヨーロッパなどでは自然治療で利用されてきました。

 その中には、妊娠期には気を付けたい子宮回りの筋肉に働きかける「子宮収縮」作用などがあると言われています。

 

▶イギリスでは妊婦のハーブはNG?
 イギリスの国民保健サービスではハーブ製品を使用しようとしている妊婦に向けのアドバイスが掲載されており、中では間違った摂取を控えるために、ハーブの利用は控えるようにという注意換気もされています。※1

1 UK Medicines Information (UKMi)  Medicines Q&As “Is it safe to take herbal medicines during pregnancy?”  23 February 2017

 

▶ハーブは絶対NG?
 ということはハーブは摂らない方が良いの? と思われるかもしれませんが、ハーブティーを摂ったからといって、必ず体に影響が出るわけではありません。

 それよりも気を付けたいのが、アロマオイルやその原料となるハーブを使用した精油です。アロマオイルは、ハーブが持つ自然本来の作用が強く、体に与える影響もハーブティーより強いと言われています。

 例えば料理などに使われるサフランなどの通経作用(月経を促進する作用。出産に影響を及ぼす可能性があると言われる作用)があるハーブは使用を控えるべきと言われています。

 アロマオイルを使用する前には、妊娠期に避けたいものが入っていないか購入時に確認したり、赤ちゃんとお母さんの健康を守るためにも、常用は避けることをおすすめします。

 一方で、最初にお伝えしたように、ハーブティーのアロマオイルよりも体に与える影響が少ないため、これから紹介するハーブに気を付けて使用することをおすすめします。

 

ハーブの定義とは?

 ハーブは人間の生活の中で使われ、薬用成分を持つものや、料理をする際に香りづけや、保存する際の風味づけ、多くでは香料等として使用されているものをさします。

 これらを乾燥し、粉砕、濃縮、抽出した精油やお茶、ハーブティー、サプリメントなどの錠剤やカプセル、チンキ剤(植物ををアルコール類(無臭の蒸留酒や無水エタノール)に浸すことで、成分を溶出させたもの)をハーブ製品といいます。※2
 ※2  国立健康・栄養研究所「健康食品」の安全性・有効性情報 

 

気を付けるべきハーブ一覧

 下記の表は精油の効能も含まれるため、ハーブティーだけでなく、アロマオイルでも注意してみましょう。

 日本人に親しみのあるものから順に表示しているため、気になる方は表中上の記載から確認してみてくださいね。

 妊娠後期には子宮収縮を促すため、ラズベリーリーフ(ラズベリー)などは安産のお茶とも言われ、ヨーロッパでは臨月には親しまれるものもあります。

 気になる方は、かかりつけ医に妊娠期に飲んでも大丈夫か相談することをおすすめします。

 

妊娠初期に避けたい子宮へ刺激があるもの

(通経作用・ホルモン作用・エストロゲン作用・オキシトシン作用)

ラズベリー
 (レッドラスベリー、エゾイチゴ、ブラックベリー)
 子宮刺激作用(妊娠中は控えるべき刺激)(インビトロ試験)、一方で、臨月時には分娩促進の目的で伝統的に利用  ※2
・アロエ
  瀉下性(しゃげせい・下剤作用)、流産誘発作用の可能性 
・ゴボウ 
 子宮刺激作用(インビボ試験) ※2
・カモミール(カミツレ )
 月経周期に影響する可能性、過剰摂取により子宮刺激作用 
・カンゾウ、甘草、リコリス 
 エストロゲン様作用、流産誘発作用の可能性  ※2
・キンセンカ、トウキンセンカ、マリーゴールド
 月経周期に影響する可能性、子宮刺激作用(インビトロ試験)
・コーンシルク/とうもろこしのひげ
 子宮刺激作用(妊娠中は控えるべき刺激)(インビボ試験)
・パッションフラワー
  ハルマン、ハルマリンを含む、子宮刺激作用(動物試験)
・セントジョーンズワート (セイヨウオトギリソウ)
  弱い子宮刺激作用(妊娠中は控えるべき刺激)、(インビトロ試験)  
・ナズナ、ペンペングサ
 流産誘発作用および月経周期に影響する可能性
・朝鮮ニンジン (オタネニンジン、高麗人参) 
 ホルモン様作用
・チェストツリー
 (イタリアニンジンボク/セイヨウニンジンボク))
  
 ホルモン様作用 
・セイヨウサンザシ、ホーソンベリー 
 子宮刺激作用(妊娠中は控えるべき刺激)(インビボ試験、インビトロ試験)
・オオバコ属 
 子宮刺激作用(妊娠中は控えるべき刺激)(インビトロ試験)、瀉下性(しゃげせい・下剤作用) 
・ホップ、セイヨウカラハナソウ
 子宮刺激作用(妊娠中は控えるべき刺激)(インビボ試験)
・黒ニガハッカ
 月経周期に影響する可能性
・ニガハッカ、ホアハウンド、ホワイトホアハウンド
 流産誘発作用の可能性、月経周期に影響 
・アギ、アサフォティアダ
 流産誘発作用の可能性、月経周期に影響 
・セイヨウダイコンソウ、ベネディクトソウ、アベンス、ゲウム
 月経周期に影響
・チャパラル、クレオソートブッシュ
 子宮刺激作用(妊娠中は控えるべき刺激)、肝臓毒性
・ブルーコホシュ、ルイヨウボタン、アメリカルイヨウボタン
 流産および月経周期に影響する可能性
・コロハ、フェネグリーク、フェヌグリーク
 オキシトシン様作用、子宮刺激作用(インビトロ試験) 
・フィーバーフュー (ナツシロギク)
  流産誘発作用の可能性、月経周期に影響
・ゲンチアナ
 月経周期に影響する可能性
・エゾウコギ 
 ホルモン様作用
・ゴールデンシール、ヒドラスチス、カナダヒドラチス、カナダヒドラスチス
 子宮刺激作用をもつアルカロイド類を含有(インビトロ試験) 
・ツボクサ
 流産誘発作用の可能性、月経周期に影響
・ジャマイカハナミズキ、ジャマイカドッグウッド(ハナミズキ)
 子宮刺激作用(インビトロ試験、インビボ試験)、刺激性 
・ジュニパー、セイヨウネズ
 流産誘発作用の可能性、月経周期に影響 ※知見に矛盾あり
・セイヨウナツユキソウ
 子宮刺激作用(インビトロ試験)
・レオヌルスソウ、マザーワート、モミジバキセワタ、ヨウシュメハジ キ
 子宮刺激作用(インビトロ試験)、月経周期に影響する可能性
・ミルラ、ミルラノキ、没薬樹
 月経周期に影響する可能性
・セイヨウイラクサ、ネトル、ネットル
 流産誘発作用および月経周期に影響する可能性
・ペニーロイヤル、ペニーロイヤルミント、メグサハッカ
 流産誘発作用、刺激性のある精油成分を含む(プレゴン) 
・ヤナギトウワタ
 子宮刺激作用(インビトロ試験)、心臓作用性成分を含む
・オキナグサ/セイヨウオキナグサ
 月経周期に影響する可能性、子宮刺激作用、(インビトロ試 験、インビボ試験)、刺激性あり(生の植物組織)
・レッドクローバー、ムラサキツメクサ、アカツメクサ
 エストロゲン様作用
・ザゼンソウ、ダルマソウ、ベコノシタ
 月経周期に影響する可能性
・カイソウ (海葱)
 流産誘発作用および月経周期に影響する可能性
・タンジー、ヨモギギク
 子宮刺激作用、流産誘発作用(精油にツヨンを含む)
・ウワウルシ、クマコケモモ、ベアベリー
 大量投与によりオキシトシン様作用
・バーベナ、バーベイン、クマツヅラ、バベンソウ (馬鞭草)
 流産誘発作用の可能性、オキシトシン様作用、子宮刺激作 用(インビボ試験) 
・ニンジン
 エストロゲン様作用、刺激性のある精油を含む
・セイヨウノコギリソウ、ヤロー
 流産誘発作用および月経周期に影響する可能性(精油にツヨンを含む)

 

妊婦には刺激が強い毒素などを持っているもの

(毒素をもっているもの、科学的根拠が足りないもの)

・ブルーフラッグ、スィートフラッグ、ヘンショクアヤメ
 刺激性のある精油を含む
・ミツガシワ、スイサイ、ミズハンゲ
 刺激性、瀉下性(しゃげせい・下剤作用)の可能性 
・ボルド、ボルドー、ボルドーモニミア
 刺激性のある精油を含む 
ヒヨドリバナ
 類縁植物に細胞毒性成分を含む 
・ボリジ、ルリジサ、ルリジシャ
 ピロリジンアルカロイド(肝障害の原因と可能性が報告されている)を含む
・ヒトツバエニシダ
 毒性成分(スパルテイン)を含む
・ブッコ
 刺激性のある精油を含む 
・フキタンポポ (カントウヨウ)
 ピロリジンアルカロイド(肝障害の原因と可能性が報告されている)を含む
・コンフリー、ヒレハリソウ
 ピロリジンアルカロイド(肝障害の原因と可能性が報告されている)を含む
・ダミアナ、トゥルネラ
 青酸配糖体を含む、大量摂取により青酸中毒の危険性 
・デビルズクロー、デビルズクロウ、ライオンゴロシ
 オキシトシン様作用 (アレルギー反応)
・ユーカリ、ユーカリノキ、ユーカリプタス
 妊娠中に精油を内服することは避ける
・ポインセチア、ショウジョウボク
 平滑筋(自分では動かせない筋肉)刺激作用(妊娠中は控えるべき刺激)(インビトロ試験) 
・フラングラ、セイヨウイソノキ
 アントラキノン(便秘改善に役立つが毒となる場合もある)を含む、規格外(標準化されていない)処方を避ける
・ヒバマタ
 甲状腺刺激作用、重金属汚染の可能性
・カキドオシ、レンセンソウ、カントリソウ
 刺激性のある精油を含む
・ゴールデンラグウォート 
 ピロリジンアルカロイド(肝障害の原因と可能性が報告されている)を含む
・セイヨウヤドリギ (俗名:ミスルトゥ)
 毒性成分を含む、子宮刺激作用(動物試験)
・ヨウシュヤマゴボウ、ポークウィード、ビショウリク
 毒性成分を含む、子宮刺激作用、月経周期に影響する可能性
・ポプラ
 サリチル酸類を含む、妊娠中のサリチル酸類の濫用(らんよう)についての知見には結論が出ていない、サリチル酸類は母乳へ移行し乳児に発疹を起こす可能性
・プリックリー・アッシュ/アメリカサンショウ
 薬理活性(薬としての効果)のあるアルカロイドおよびクマリン類を含む
・サザン・プリックリー・アッシュ
 薬理活性(薬としての効果)のあるアルカロイドを含む
・クイーンズデライト
 刺激性のあるジテルペン類を含む
・ルバーブ(ショクヨウダイオウ/マルバダイオウ)
 アントラキノンを含む、規格外(標準化されていない)処方を避ける 
・サッサフラス、サッサフラスノキ
 流産誘発作用(精油)、肝毒性成分(サフロール)を含む 
・センナ、アレキサンドリアセンナ、チンネベリセンナ
 アントラキノン(便秘改善に役立つが毒となる場合もある)を含む、規格外(標準化されていない)処方を避ける
・ヤナギ属、セイロウシロヤナギ
 サリチル酸類を含む、妊娠中のサリチル酸類の濫用(らんよう)につい ての知見には結論が出ていない、サリチル酸類は母乳へ移 行し乳児に発疹を起こす可能性
・イエロードック、ナガバギシギシ、エゾノギシギシ
 アントラキノンを含む、規格外(標準化されていない)処方を避ける
・モリンガ、ワサビノキ
 刺激性のある精油を含む、多量摂取を避ける※4
・キョウニン/クキョウニン/ホンアンズの種子
 毒性成分(青酸配糖体)を含む

 

カフェインを含むもの

・コーラ
 カフェインを含むため制限が必要
・マテ
 カフェインを含むため制限が必要
・ロベリアソウ、ロベリア、インディアンタバコ
 毒性成分(ロベリン)を含む カフェインを含むため制限が必要 

参考文献

出典:国立健康・栄養研「健康食品」の安全性・有効性情報「 1 妊娠中のハーブ製品*1の自己判断による摂取に注意して下さい」https://hfnet.nibiohn.go.jp/usr/kiso/ninpu-herb/ninpu-herb-document.pdf

※2 ゴボウ、パセリ、ラズベリー、等は食用としても広く摂取されていますが、食品として安全に使用できていたもの(食経験があるもの)でも、薬用成分を多く含む部位を摂取したり、大量に摂取したり、抽出あるいは濃縮物を摂取することはリスクにつながると考えられます。

※3 上表は英国MCAが2002 年に発表したリストで、主に欧米でよく利用されているハーブが記載されています。そのためこ の表に記載されていなくても、妊娠中に避けるべき・慎重に使用すべきハーブは他にも多く存在します。

※4 SAFETY OF HERBAL MEDICINAL PRODUCTS MCA(旧英国医薬品規制庁)が作成した妊娠中のハーブ製品利用の安全性について(PMID:23353615) Asia Pac J Clin Nutr. 2013;22(1):83-9.PMID:24330413) BMC Complement Altern Med. 2013 Dec 12;13:355.

 

妊娠期に注意が必要な飲み物は?

 妊娠期に注意すべき飲み物は、主に以下の飲み物です。

▶アルコール

 妊婦のお母さんの血中アルコール濃度が高くなると、出産時に低体重で生まれてくるリスクが高まり、他にも胎児の体の奇形や、脳に障害を持つ「胎児性アルコール症候群」のリスクが高くなると言われています。

 治療法はないため、妊娠中のアルコールは控え、ノンアルコールなどを選ぶようにしましょう。

 

▶カフェイン

 実はカフェインは少量摂っただけでは、胎児に影響を与える根拠は見つかっていません。一方で、イギリスの食品基準庁(日本の厚生労働省のような組織)では妊娠中に飲み物などからカフェインを摂ることで、出産時に乳児の低体重リスクが増したという報告がされています。

 詳しいカフェイン摂取量については、こちらの記事をご覧ください。

リンク:妊娠期のノンカフェイン記事

 

 

最後に

 妊娠中はなにかと情報に敏感になりがちな期間ですが、アロマオイルなどの使用は、使用してよいかかかりつけ医に必ず相談しましょう。

 ハーブティーについては、上記のものを避け、安定期に入ってから医師の確認を得て、ハーブティーを楽しみましょう!

 心配な方は、ハーブティーは臨月に入ってからや出産後に飲まれるのが安心です。臨月時にはラズベリーリーフのように、一般的に効果が認められているものを選びましょう!

 ハーブティー以外にも妊娠期に飲んでもよい飲み物はたくさんあります。妊娠中に飲んでも良いお茶についてはこちらの記事をご覧ください。

「ノンカフェインなら飲んでいいの?」妊娠中にOKな飲み物一覧をチェック!


監修: 岡部遥
管理栄養士。NRサプリメントアドバイザー。 栄養教諭一種免許状取得。特別養護老人ホーム勤務後、ドリコス株式会社でオーダーメイドサプリメント抽出のアルゴリズム制作、栄養情報の配信を担当。

 

参考文献

※1 UK Medicines Information (UKMi)  Medicines Q&As “Is it safe to take herbal medicines during pregnancy?”  23 February 2017

※2 国立健康・栄養研「健康食品」の安全性・有効性情報「 1 妊娠中のハーブ製品*1の自己判断による摂取に注意して下さい」 https://hfnet.nibiohn.go.jp/usr/kiso/ninpu-herb/ninpu-herb-document.pdf

※3「ハーブと精油の基本辞典」 池田書店 著者林真一郎 2020年5月25日発行

 

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